RAW記録について(2)

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     前回はRAW記録がプロセスを通さずに、イメージセンサーからの映像信号を(圧縮は別にして)そのまま記録することを説明しました。
    今回はRAW記録のメリットとデメリットについて書いてみます。

    まず、メリットですが、
    ・後処理で如何様にも画作りできる
    ・ダイナミックレンジを大きく記録できる
    ・撮影時、フォーカスとフレーミングに専念できる

    があげられます。
    RAWで記録すると、いわば食材を生のまま冷凍して残しておくようなものですから、後で如何様にも調理できるわけです。
    栄養やビタミンもそのまま残っています。
    これと同じで、後処理でカラーグレーディングをする場合、残された豊富な情報を使用してグレーディングすることができます。
    例えば映像信号の量子化ビット数は、XDCAMやP2といったプロセス後の映像信号で記録する場合は8bitや10bitになってしまいますが、RAWで記録する場合は12bitや16bitで記録することができます。

    次に広いダイナミックレンジで記録することができます。
    ダイナミックレンジとは、撮影するフレーム内の最も明るい部分と、最も暗い部分の差を言います。
    この差が大きいと、ダイナミックレンジが大きいシーンということになります。
    窓を通して、暗い室内と明るい室外を同じフレームに入れて撮影する場合などがこれに当たります。
    経験があると思いますが、室外に露出を合わせると室内が真っ暗になってしまいますし、室内に露出を合わせると室外が真っ白に飛んでしまいます。
    これを黒潰れとか白とびと言いますが、黒潰れや白とびは、後処理で戻ってくれません。
    ダイナミックレンジの広いカメラは、それを避ける意味で優れたカメラと言えます。
    ダイナミックレンジは通常Stops(絞り)で表します。
    普通のビデオカメラでは8Stops程度ですが、RAWだと13〜14Stopsという値になります。
    なお、RAWでなくても、Logという手法を使って大きなダイナミックレンジに対応することもできます。
    ソニーのS-LogやキヤノンのCanon Logなどが、その例です。

    LogとRAWはよく並列に比較されますが、これは正しくありません。
    Logはあくまでダイナミックレンジを広くするための手法ですが、RAWはダイナミックレンジだけではなく、ISOやディテールといった要素も、後処理で変更することができます。
    その意味ではRAWのほうがより柔軟に後処理できるわけです。

    RAWで記録する場合、カメラマンは現場でフレーミングとフォーカス、そして白とびと黒潰れが無いか、に専念していればよく、適正露出や色温度やディテールや、「ポートレート」や「風景」などのモードの選択に悩まされることはありません。
    RAWはカラーグレーディングに向いている、などと言われますが、カラーだけでなく、画創り全体に対応できるといえます。

    さて、良いことばかりではありません。
    デメリットについて考えてみましょう。

    ・後処理が必要
    ・ファイルサイズが大きい
    ・制作機材に高いパフォーマンスを求められる
    ・現場でプロセスされた画が見られない

    の点が上げられます。

    後処理が必要、というのは後処理前提の場合はもちろん問題になりませんが、時間やコストが無くて後処理はできない、という制作現場ではRAWは全く向いていません。
    従って、比較的時間やコストに余裕のある映画やCM、あるいは映像美を見せる自然モノや芸術モノには良いのですが、ニュースや制作時間に追われるドラマやドキュメンタリーといった番組には不向きです。

    次にファイルサイズですが、これは相当に大きくなります。
    例えばXDCAMは4:2:2モードで記録する場合50Mbps、P2ですとP2 Intraモードで100Mbpsといったレートです。
    4Kの場合では、例えばソニーのXAVCでは約200Mbps程度ですが、RAWで記録する場合は、例えばSCARLET-Xでは8:1のモードのときは300Mbps程度、3:1のモードのときは820Mbps程度です。
    Blackmagic Designの4Kカメラでは880Mbpsと書かれています。(いずれも24fps時)
    800Mbpsの場合、128GBの記録メディアでも20分そこそこしか記録できないことになります。

    これだけ大きいファイルを扱うわけですから、編集機材もそれなりのパフォーマンスを持ったものが要求されます。
    200Mbps程度のファイルを扱う場合は、Corei7レベルの普通よりちょっと上級のパソコンや、場合によってはMacBook Proのようなラップトップでも何とかなりますが、800Mbpsと言われると、もはやそのレベルではありません。
    ワークステーションクラスでもやっとです。

    最後に、現場でプロセスされた画が見られない、というデメリットです。
    プロセス回路を搭載していないので、モニターで見ることのできる画は、RAWのうすらぼんやりした画になってしまいます。
    しかし、実は、SCARLETやEPICには”LOOK"という設定項目があり、ここで "Saturation"、"Contrast"、Brightness"、"FLUT"、"Exposure"、"Shadow"といったパラメータが設定できるのみならず、Luma、R、G、Bそれぞれ独自の設定もできてしまいます。
    そして、この設定に即した映像がディスプレイでモニターできます。
    もちろん、これらの設定はあくまでメタデータとして保存されているわけで、実際の画はあくまで生データ(RAW)です。
    この設定値は、メタデータとしてREDCINE-X ProやPremiereProで使用できますので、これをリファレンスにグレーディングしていくもよし、全くの生映像から創り上げていくのもよし、です。
    従って、このデメリットはカメラによっては当てはまりません。

    以上、RAWのメリットとデメリットについて説明しました。
    RAWはファイルサイズが大きいし、後処理も大変なので、大手プロダクションしか使えないのではと思われたかもしれません。
    しかし、実は個人レベルのクリエーターでも、ちょっと上級のパソコンで編集やグレーディングすることもができます。
    それについては、次回解説します。

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